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第二話 2年A組
「あまいものがきらい」
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 そしてサービスエースとリターンエースの応酬とほんの少しの下心の末、僕はちゃっかり須藤さんの部屋で手作りとは思えないほど美味いケーキを腹いっぱい食わされた。甘いものが嫌いになりそうなくらい。コーヒーカップを二つ乗せたらおしまいの、小さな低いテーブルの下から、須藤さんの素足がにょっきりと伸びてきて、反射的に僕は視線を壁に貼られたポスターに向けて、モノクロのブライアン・アダムスと見つめ合っていた。
「林先輩」
「なな、なに?」
 名前を呼ばれて目を見返すと、そのままだまって下を向いてしまった。コーヒーカップにスプーンを入れてくるくる回しながら、ようやく聞こえるほどの小さな声で、須藤さんが途切れ途切れに話し出した。
「相原先輩とは、まだ、何も、してない、ですよね?」
「なにをやぶからぼうに」
「ごめんなさい、でも、聞きたいんです」
「こないだも言ったけど、手をつないだだけだよ」
 もう少しケーキを食べませんか、と言うみたいに、あたし、いいですよ、それ以上、いつでも、とさらりと言われ、その意味に気付くのに少し時間がかかった。気付いた瞬間に息が止まり、心の中で八重ちゃんが悪魔と戦争を始めた。
「占いが出来る友達に、一年生になってすぐ現れる先輩が初体験の相手だって言われて」
「ちょっと、そんなことで決めてもいいものなの?」
「でも、その子の占い、すごく当たるんです、怖いくらいに」
「だからって」
 動揺を隠すように手にしていたコーヒーカップから手を離した瞬間に、手首をふわっと掴まれた。でもほんとに好きになっちゃったんです。引き寄せられた先はあの途方もない胸の上だった。大きな耳たぶの塊、いや、もっと柔らかかった。手のひらの向こうに、高さが十センチぐらいありそうなふたつのオムライスがあるみたいだった。膝立ちになった須藤さんが僕の手を胸に抱きしめたまま、にじり寄る。もう、決めてたんです、それが、きょうだっただけだから。しがみ付かれて、バランスを失い、毛足の長いカーペットにもつれるように倒れこむ。悪魔が八重ちゃんに目隠しをしていた。僕の手を胸に置いたまま、口唇を重ね、身体の位置を少しずらして抱き締め合った。力の入らない指先で赤いリボンタイをほどいて、首からひとつづずつボタンを外していく。
「せん、ぱい」
 ブラウスをそっとはだけると、雑誌でも見たことのないほどの胸の谷間が呼吸にあわせてゆっくりと起伏を繰り返していた。外し方の分からないフロントホックを須藤さんが自分で外す。留め金を押さえていた指が開くと、薄紅色のブラジャーがするするとすべり、かろうじて胸を隠しているだけになった。
「すごい」
「あんまり、見ないで、恥ずかしい」
 鼻にかかった甘ったるい声が、激しく僕を欲情させる。首を曲げて身体をよじった須藤さんの胸が、片方あらわになった。肌の色に近い、きれいな色がさらに僕の興奮を高めていく。もうすでに漏れてしまいそうなぐらい、チンコは固くなって須藤さんの腰に当たっていた。わけもなく「ぱふぱふ」ということばが頭に浮かぶ。半袖のブラウスをスカートから引きずり出して、ブラと一緒に脱がせると、紺のラルフローレンのハイソックスとチェックのスカートだけの、エロ本のモデルみたいな姿になった。新鮮な生卵みたいに、真ん丸に張って上を向いた胸の裾からすくいあげて、乳首を口に含む。
「あふ、くすぐったい」
「す、須藤さん、ごめん」
「あかねって、呼んでください」
「あ、あ、あかね・・・、ちゃん」
 無我夢中で胸ばかり愛撫していた。あかねちゃんは甘えるような声で頬を赤く染めていく。スカートを履いたままだとしわになってしまうからさっさと脱がせ、とどこかで読んだ気がする。手を伸ばしてまさぐってみたが、腰のファスナーを守るホックが外れない。それを察したのか、あかねちゃんが器用に牙城を崩して、脱がせやすいように膝を立てて、腰を浮かしてくれた。ブラと同系色の、格子模様の小さなパンツ。少し毛が透けていた。ふやけるくらい舐め続けた乳首を飽きることなく舌ですくいながら、おそるおそるパンツの上から毛を触ってみた。いきなりその下に手を伸ばすのは怖かった。あかねちゃんはさっきからすでに、かすれそうな声で、はあぁん、と繰り返していた。
「先輩も、脱いで、恥ずかしいよ」
 もどかしくてワイシャツのボタンなんか引きちぎってしまいたいぐらい、指が言うことを聞かない。おれはカーロス・リベラか? まさにパンチドランカー症状のような手でどうにか服を脱いで、ややくたびれ気味のトランクス一枚になる。胸や腹の皮膚がぴったりとくっつくように重なりあい、キスをする。肌が触れあうすべすべとした感触がおそろしく気持ちがいい。舌を伸ばすと、あかねちゃんも舌をからめてきた。唾液にまみれてキスしていると思うと、なんだかいやらしくて興奮して頭に血がのぼる。チンコがあかねちゃんのパンツ越しに柔らかくて薄い毛の存在を感知した。もうすでに汁が滲んでトランクスに五百円玉ぐらいのシミを作っているのを知られたくなくて、自分から脱ごうと思ったが恥ずかしいのでまずあかねちゃんのパンツに手を伸ばした。くちゅ?
「んん」
 その時、感じると濡れる、という事実にふれ、僕はなんだか不思議な感覚におそわれた。あかねちゃんのまんこが濡れてる。すごい。何がすごいのか分からないがすごい。
 あふれる中心に中指を押し当てて、小刻みに振動を送り込む。それにあわせてかわいらしいアニメみたいな声で、ああああああん、と反応を返して来る。ほんとはもっと愛撫してあげるべきなんだろうけど、気持ちが我慢の限界だった。
「あかねちゃん、いい?」
「うん」
 あかねちゃんのパンツを脱がせて、自分も脱ぎ、開いた脚の間に膝立ちになった。このまま入れてもいいものだろうか。中に出さなきゃ、まあ、大丈夫かもしれない。先走りを指でぬぐい、先端をあてがおうとそこをのぞきこんだ。これが・・・、まんこ?
 何にも似ていない不思議な形のまんこの入り口が、鉛筆すら入りそうもないぐらいの口を開けてひくひくしていた。ピンク色で、濡れて、光っている。顔を両手で覆い、カエルみたいな格好であかねちゃんが震えていた。鉛のように固まった亀頭をそこに当てて、押し込んでみたものの、案の定入らない。すでにあかねちゃんは少し痛がっている。ゆっくり入れたらかえって痛いらしい、という記事を思い出す。あかねちゃんに声をかけて、チンコで念力を送り込むように、ぐいっと腰を、あれっ? 入った?
「いたぁぁぁいっ!」
「えええ? だいじょぶ?」
「いい、いた、いたぃ、でも、がまんする」
 隙間なくチンコ全体を熱く、ぎゅうぎゅうと締め付けて来る感覚。少し腰を引くと、あかねちゃんがすごい顔で歯を食いしばって耐えている。その顔は正直あまり美しくなかったが、なんともいじらしくて、僕はちょっとあかねちゃんがかわいいと思った。気持ち良すぎて危険で動けない。なにせ動いたら痛がるし。でも、はだかで、抱き合って、セックスしている。セックスしている。はじめてのセックス。チンコがまんこに入っている。チンコがまんこに。そう考えただけで、動いていなくても気持ちまでとんでもなく気持ち良くなってしまった。
「あかねちゃん、ごめん、おれ、すごい気持ちいい」
「ふー、ふー、うれしい、あたし」
「もう、出ちゃいそう、なんだけど」
「うん、いいよ」
 歯を食いしばるあかねちゃんのまんこからチンコを抜き、亀頭を握って自分の手のひらに吐き出した。手からあふれそうなほど出たのを見て、なんだか笑いがこみあげてくる。こんなに出しちゃったよ、おれ。くくく。
「せんぱい、ありがと」
 手に握った精液をあかねちゃんに取ってもらったティッシュペーパーで拭い取り、そのあいだ、あかねちゃんは向こうを向いてティッシュでまんこを拭いていた。血がついていたかどうか見てみたかったが、大量のティッシュでぐるぐる巻きにしてゴミ箱に入れられたものを手に取るわけにはいかない。ふたりとも全裸で、向かい合って正座をしていた。
「しちゃった、ね、先輩」
 占いが的中してしまった。
 膝に手を置いたあかねちゃんの腕がおおきなおっぱいを身体の真ん中に寄せていたせいで、さらに大きくふくらんでいるのを見て、また股間がうずうずとし始めてしまった。
「ねえ、あかねちゃん」
「なに?」
「あとででいいけど、もう一回、いい?」
 大袈裟に喜んで、あーん、いいよぅ、何回でもしてあげる、僕に抱きついたあかねちゃんが、顔にほほをこすりつける。そのまま押し倒して、息つく間もなく二回戦に突入した。
 それからというものの、僕たちは八重ちゃんの目を避けて毎日のように寄り道して、甘いものを少し食べて、貧しい会話のあと、「覚えたてのつがいのサル」みたいに、セックスばかりしていた。
 休日に家でそれを思い出すとき、なぜか顔は八重ちゃんになっていて、あーあ、八重ちゃんと付き合いたいなぁ、などと罰当たりなことを考えて、またティッシュを消費するのだった。
 汗だくになって一日中セックスしていた夏休みもあっという間に終わり、二学期になると、全校中でささやかれているのではないかと勘違いするほど、須藤さんがきれいになった、とあちらこちらで噂になっていた。ところがそんな日々も束の間、体育祭が始まる頃にはあかねちゃんは同級生だけでなく上級生からも注目の的になっていて、いつの間にか、彼氏とか彼女とかの関係を築く前に、あかねちゃんと同じクラスのいかにも遊び人風の男が「彼氏」を名乗っていた。僕が男前になったという噂は、まったく聞こえてはこなかった。なんだそりゃ。
 そんな調子で、僕はまた八重ちゃんをからかって、困ったり怒ったりする顔をながめては、なんとなく自分らしいと思える秋と冬を過ごし、三年生になった。また、同じクラスになった。神に感謝した。甘いものが、少し嫌いになった。そして、塩ラーメンを食べた。卒業する前の日まで、塩ラーメンばかり、食べた。


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十一月の偶然
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